ハエと一体化したことによって、彼は「異常」になったのではなく、すでにその人間の姿のうちに「狂気」が潜んでいた。
自らの発明を世に知らしめたいという天才の願望の裏側にあるのは、自分のことを理解してもらいたいという凡才の願望。なりふり構わず、願望を盲信していくことで、その相貌は「醜く」なっていく。
暴走していくハエ人間は、ラストでは目も当てられないような姿を曝け出す。それはまさに欲望に駆られ暴走していく人間の行き着く先の姿をあらわしている。
誤ちを悟ったとき、ハエ男は、醜い自分を葬ってほしいと希う。その姿は、もはや「醜さ」を通り越し、「どうしてこんなことに」という後悔とともに、切なさ・やるせなさという類の感情を惹き起こす。
グロテスクなホラー映画といったイメージとは異なり、実際にこの映画を見ることで覚える感情は、非常に複雑なものである。
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